櫻井 美江展
9月22日(金)〜10月4日(水)
11:00 〜18:00 木曜休廊 最終日〜16:00
人はいくつもの役割をもって「私」として社会に存在しています。みなさんはいくつの役割を自分の中に見つけられるでしょうか。
たとえば私は、まず母親であり、教員として何かを伝える立場であり、それと同時にアートセラピスト、ヨガインストラクターとして誰かに寄り添う立場でもあります。時にそれらを学ぶ者でもあります。…妻であり、娘であり…そして、やはりアート表現者でありたいと願っています。
このようにして、私たちは日頃、いくつもの「私」を明確な境界線を意識することなく、それぞれの場面で必要に応じて無意識に上手に使い分けています。
では本当の「私」とはどの私なのか?それぞれの役割を担った集合体が「私」であるのか?それとも全ての役割を切り離したどこかに本当の「私」がいるのでしょうか。
私の制作モチベーションはそこからきています。
2007年に長男を出産し、彼に療育が必要になったことで、「まずは(良い)母親でいる。いなくてはいけない。」という私が強くいました。出産前まで、自分の分身を産み落とすような感覚でアート制作をしていた私には、現実世界での出産、子育てを通して、自分のアート制作の意味が見えなくなった時期が長く続きました。
ある時、私の目の前に、捨てれずに溜まっていく、子どもたちの着れなくなった服や返却された彼らの学習プリントをみて、「なんで捨てられないのだろう」と考えました。そこに沢山の大切な何かが詰まってるように感じました。「ここに制作することで何かから解放されるのでは」と思い、ドローイングやステッチを始めると、そこからまたアート制作が出来るようになりました。
現在私は、返却された子どもの学習プリントや古着を支持体と制作しています。そうすることで、母である私がその役割から切り離されることなく、安心安全にアート制作することができるバウンダリーになっています。そして出来た作品は、日々の断片を繋ぎ合わせた「今」であり、「いまのここの私」です。本当の私とは何なのか。それを絶えず自己確認する、大切な印となっています。
櫻井美江(サクライハルエ)1972年 東京生まれ
エデュケーション
1997 年 東京造形大学 造形学部 美術学科 ( 絵画版画コース専攻 ) 卒業
1998 年 東京造形大学 造形学部 美術学科 ( 絵画版画コース専攻 ) 研究生修了
2000 年 ロンドン芸術大学カンバウェルカレッジ 大学院 版画コース修了
2014 年 英国アートセラピスト協会 アートセラピーファンデーションコース 修了
2020 年 武蔵野大学 通信教育部人間科学部 人間科学科心理学専攻 臨床発達心理コース卒業
エキシビション
1996 年 第 6 回 アートボックス大賞展 ( 麻布工芸美術館、東京 )
1998 年 Agart World Print Art Festival (スロベニア)
1999 年 第1回 神奈川国際版画トリエンナーレ (神奈川県民ギャラリー、横浜)
2000 年 「Printmaking Show」 (センターナリーギャラリー、ロンドン )
2001 年 「Gods & Monsters 」(ヘンシャー アート&クラフトセンター、ノースヨークシャー / イギリス )
2001年「Morley Print Show」(R.K. バートギャラリー、 ロンドン)
2003年「INFINITY」(St. Cyprian’s Church, ロンドン)
2006年「Loop」(Menier ギャラリー、ロンドン)
2012年 第6回ドウロ国際版画ビエンナーレ(ポルトガル)
2021-23年「ギャラリーに行こう 2021-2023」(数寄和ギャラリー、東京)
個展
1996年 アートボックス ギャラリー (東京)
1997年 銀座九美洞ギャラリー(東京)
2001、2003年 ギャラリーポエム (東京)
2002、2004年 ギャラリー福山 (東京)
受賞/出版
1996年 アートボックス大賞展 中林忠良賞
1997年 版画藝術 No97 オリジナル版画制作
2000年 Edward Arizzone Prize(イギリス、ロンドン)